響むバイオスフィア ペーパーと葉ノ崎父の話②

続きです。

前編

ironorange.hatenablog.com

 

葉ノ崎柊一郎の話

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・こちらのGoogleフォームに感想をくださった方で、発言で一呼吸置くたびに「柊一郎さん」というワードがサブリミナルしていた方がいたのでお蔵出しです。全部小ネタっぽい感じで散漫です。
 彼は第一話ゲストキャラ的な立ち位置なので、今後他キャラに比べると掘り下げは浅くなっていく予定ですしここで。アシュリーとトウミもちょっとずつ気に入っていただいているようですが、二人はまだこれから中心に据えたいので、数年お待ちください……。漫画って時間かかるね。

・表面は温厚で穏やかですが、自分の在り方までは流されない人です。価値観に葬儀屋(花士)の経験が顕著に出ているので、「突出はせず周囲を繋いで円滑に回すけど、それでも自分を失うことはない」という感じの人物像。
 本編でも柑太が「平気だ」と言えば面と向かって過剰に手出しはしませんが、裏側では色々気を回します。柑太初仕事の際も、参列者でもない先生(トウミ)と猫(アシュリー)をちゃんと控えさせていたり。

・10年前の嵐に際してとても頑張った面子の一人として居住棟では慕われています。居住棟はそこまで治安はよくないのですが、屋上の花の屋敷に手出しする者はいません。屋内でもシロを夜に一人歩きさせなかったのはそのへんの子ども110番の家的認識もあります。

・先生と猫に頼み事をする場面で傘を発見しています。また、ラストの方回想3コマの匂わせで、不思議な傘に花から姿を隠してもらっている描写があります。
 この辺のご縁、「どんな傘か知っていたから柑太の無茶に気付けた」という流れになっています。その辺がなくても彼なら気付いたかもしれませんが、シロが「傘をあげたい」と言っていなければこの辺りの手掛かりが生じないまま仕事に臨んでしまったわけなので、傘屋師弟と花士師弟に縁がなければ悪いことが起きていたのかもしれません。

・柑太と二人きりで喋っている時はほとんど無表情で描いてありますが、「頼むよ」以降は二人きりの対面時顔つきが変わります。ちょっとだけお母さんぽさを降ろしてます。
 ペーパーで触れて頂いたとおり、終盤の表情についてはネームの頃からイメージがありました。柑太のどこか「わかりたがらない」ところと、柊一郎の「自分を介入させすぎない」という面をここの顔面だけで崩してしまおうとは思って。無茶振りをしましたね。

・柑太の仕事を引き継いだ時、髪型が香澄に寄せられています。これは細かすぎて伝わらないアレなので最早自分でバラしますが、慌てて結い直したので三つ編みが比較的ゆるゆるです。見開きの香澄の姿も、回想に小さく描かれた後ろ姿より三つ編みがゆるかったり。

・絶対カットすることはないと踏んでいた当初プロットのシーンに「香澄が亡くなってから最初の仕事」の回想がありました。
 灰を抱いて蹲ったまま動けなくなってしまう柊一郎、その丸まった背中を見ている柑太……という感じ。二人の心に隙間が出来るとともに、周囲の胸中には「我々はこの人に背負わせたんだ」と罪悪感が湧き上がる場面。それから、体が再起を拒んでも心は立ち上がる気概を捨てない柊一郎の葛藤する姿に、酷なことと知りながらも香澄の夢と幻を紡いで欺くところまで。

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 説明不足が逆に加速しそうでやめました。設定としてはこの出来事は没になっていないので、どこかで折を見て入れ込むかもしれません。
(画像は初稿ネームです。見直したら初稿にはなんと「ひらめき!ほしがき!」コンボがありませんでした。)

・腕を失った時、一文字だけセリフが小さく仕込んであります。誰かの名前を呼ぼうとした時の、最初の文字です。誰の名前か決めていません。
 私は読み直す時いっつもここ見つけられずに通り過ぎます。特にデジタルだと目に入りにくそうだな~って。

・めっちゃどーーーでもいい設定ですが婿入り婚でした。許嫁制度が嫌だった名家の娘による反抗的スカウトで結婚です。おめでとう!
 香澄は格下の家から婿を取るわ海すら越えて生きていくわで中々破天荒なレディでしたが、それに順応した柊一郎もちゃっかりやんちゃの素質があります。

・香澄との馴れ初めもそうですが、周囲のわがままや稚拙ぶりに対して「そうかい」と二つ返事で合流できるところは『後天性ヒーロー』ホワイトの系譜かもしれません。柑太も特徴はレッドっぽいし。
 ヒーローの方では「そうかい」VS「そっか」の相互ロジカル包容みたいな関係性でしたが、葉ノ崎父子はそれより少し効率が悪いです。柑太は抱えていても得にはならない苦痛を手放さずにいたし、柊一郎も「合理的に筋が通るか否か」以外の尺度を持ち出すので、お互い感情的なところはある。ヒーローは理屈が絡む生き方の人間が多かったですが、今回の居住棟は「理屈じゃねえんだよ!!!」です。

・柑太の時も腕力があるという小ネタは言っていますが、その柑太が両手で振り回す道具を片手でぶんぶんしている辺りからパワーについてお察しいただけるかと思います。